『よみはぴ』にようこそ。
ブックレビュアーの瑠璃花です。
皆さん、『アメトーーク』の『本屋で読書芸人』の回、ご覧になりましたか?出演なさっていた芸人さんたち、どなたも相当な読書家で、話題作や、ちょっと切り口の変わった新鮮な選書なさってるのが印象的でした。自分が持ってた本はあの中だと1冊。ヒコロヒーさんの紹介なさった、こちらの本。
『私は地球人です。』って自己紹介が、宇宙人には有効ではないとか、想像できますか?じゃあなんて言えば良いんだ?なんて疑問に答えてくれちゃうのがこの本なんです。面白そうでしょ?
一冊でも自分の書棚にある本が紹介されるとテンションアガりますが、自分が持ってる本は紹介していらっしゃらなかったのに、私がすっかり惚れ込んじゃった芸人さんがいらっしゃいました。それは、書店員芸人『カモシダせぶん』さん。
いや、もう、トークが熱い!ほんっとうにご本が好きって、伝わってくるんです!ご自身のYouTube配信でも、見に来た方のリクエストに丁寧に応えて、合いそうなご本をプレゼン。その内容が実にいいんです。そこで私、むくむくとある野望が湧き上がってきました。何だと思います?対バンならぬ、対選書がしたい!めっちゃしたい!
大事なのは『選ばれた本の次に何を読むか』
だいたい、書店員さんも図書館員も、私のようにそこらにいる本好きのおねーさんも、何する時が一番楽しいって選書なんです。カモシダさんのように日々現場経験を積んでる書店員の方に、退職した図書館司書もどきの私がかないっこないですが。
本好きになるためには、紹介された本の次。『面白かった』の連鎖、マジ大事です。そんなわけで、憧れのカモシダせぶんさんの選書に加え、その後にもう一冊読みたい本を、瑠璃花が選んでみました。(だって一緒に選書してみたくなったんだもん。我慢できなくてry)冗談はともかく、皆様の楽しい読書のネタになれば最高です。
何故かリンクが中古しかないです。ごめんなさい。もちろん新本も取り扱いがあります。Amazonもごらんくださいね。中国の、いえ、アジアンSFの新境地を拓いた傑作。三部作です。
始まりは文化大革命。父を失った少女は高名な物理学者になりますが、異様な施設での研究に誘われます。その研究を鍵に、後ほど多くの科学者失踪事件が起きるとも知らず…最後には思いもよらぬ展開が待っています。太陽光線に灼かれるというワードとどう繋がるか!?衝撃的ですよ。
(火事はショックでいらしたと思います。ご無事でよかった…。)
『三体』と並んで、中国のSFがアツい!と話題になった作品。大都市北京を折りたたむって一体?
貧富の差で人々は住む階層を決められていた。3つの階層全てを移動し、都市の全容を知った男の見たものとは―。本当に北京がたたまれる様子、身体で感じられるほどにリアルです。五感にきます。
この本はアンソロジーなので、短めでいろんな作家さんの作品が楽しめるのもオススメポイント。『三体』の抜粋版も収録されているので、先にこっちから読んでみるのもいいでしょう。お好みの作品がきっとありますよ。
私も初めて知った作家さんです。大急ぎで読んでます。
文字コードを入力しないと出せない文字が、自殺者の遺体に添えられるという不思議な現象が続きます。自殺する前の本人の視点と自殺後にそれを捜査する刑事の視点で物語が進みます。
普通、自死した人の思いを知ること自体が難しいことですよね。そこに、使う機会のすごく少ない文字が添えてあるとくれば、死んだ本人がやったとは思いにくい。一体誰が何のために?気になってしようがないです。確かにこれ、面白い!
どうしても暗号を解く作品が、いいのが思いつかなくて、ちょっと毛色の違う方から攻めてみました。『百人一首』が実は壮大な暗号だったという説、ご存知ですか?その謎解き、クロスワード説を最初に唱えたと思われる本がこちら。
これは中古オンリーなので古書か図書館でどうぞ。百首に藤原定家が、壮大なメッセージを込めた、その相手。意図はなんだったのでしょう。実際に札を並べながら読んで下さい。謎が解けていくのがすごい快感!今の私達が知っても面白いミステリです。
もう、こんな面白いことやっちゃう本ってあるでしょうか。モノづくりにワクワクする男性は、この世にたくさんいるでしょうが、だからって、トースター作るのに、鉄鉱石で銅線作るところから行きます?読まないでいられない。リアルマインクラフトじゃん!
今、君に伝えることがある。私達の乗ったタイムマシンは、ぶっ壊れたらしい。つまり、現代には帰れないみたい。どーするよ?頼りになるのは自分たちの持ってた科学知識だけ。
こうなったら、どうします?これ、小説だと思うでしょ?違うの。ノンフィクション・エッセイなんです。そんなサバイバルある?生きるか死ぬか。それは私達が、ゼロから生み出すモノにかかっている!
ここで芥川持ってくるところが、カモシダさん、渋いです。カッコいい文体がお好きなのかな。芥川の得意とする、短編がたくさん収められています。どれから読み出しても面白い。クールで品のある文体。ドキッと刺さる一言は、何年経っても色あせません。
近代文学の中で、芥川と双璧をなす、カッコいい文体といえば、中島敦を強力プッシュします。虎に変身した青年エリートの悲劇を描いた『山月記』は有名ですね。でも、彼の作品ってそれだけじゃないんです。南の島を舞台にした小説群や、西遊記の二次創作(?)しかも沙悟浄が主人公…なんて作品が収録されています。
中島の、深い教養がベースになっているのは『山月記』同様。残された作品がみな、どこかに余情を感じさせ、中島の人柄も想像できてしまいます。
ダイエット中の人は要注意!(絶対負けますけど。私?勝つ気がすでにないw)美しいイラストでたくさんの洋菓子が紹介してあります。たくさんの言葉よりこの本は表紙のイラストが一番雄弁な紹介。中にはめくるめくような美味しそうなお菓子たち、楽しいエピソード!私も手元に置きます。
ようかん、地味っ!って思ったそこのあなた。待って!鉄板の贈り物和菓子、『虎屋のようかん』の秘密がこの一冊に凝縮されているんです。
虎屋さんのサイトには、季節の和菓子にまつわる興味深いコラムがずっと連載されていて。お菓子を買わなくても、毎月のお菓子の紹介を見るのが楽しみに、サイト訪問する方がいたり、それをまとめた本も出ている人気ぶり。
看板菓子のようかんのこと、虎屋さんほど詳しいところはないでしょう。ようかんにも四季があり、年中同じ味ではないんです。古い菓子帖にまつわる話も面白いですよ。カモシダさんのお選びになった本と同じ方向ではつまんないので(笑)。こちらは一点突破を狙ってみました。
日常に潜む悪意と、それに囲まれ、立ち向かい、あるいは内省してゆくことで、そこから脱出する人々を描かせると天下一品の辻村深月さん。『かがみの孤城』も、じわりと私は怖かったです。この話も、もう内容の紹介文から怖い。
どこか不自然に馴染めない転校生が来て、それから怪異が…というのは、例えば『ねらわれた学園』の昔からあるオープニングなのですが、ここで怖いのは超常現象じゃなく、ただの人間たちの心理。作品紹介の公式の告知、赤い背景なんです。もうそれだけで、
「ああ、悪いことが起きる…。」
って、怖いもの見たさで読んじゃう。私?読めるかなあ?怖い…いや、でも。見るべきか…。誰か背中押してください。
小池真理子さんの直木賞受賞作です。あさま山荘事件を背景に、当時女子大生だった主人公と、大学助教授夫妻との間に燃え上がった三角関係と、その限界の果に起きた事件を描いています。
展開だけ書くと、なんだ、色っぽいドラマ?と思うでしょう?でも実際の文からは、乾いた淡々とした感触がくるのです。人間の心が、実は一番怖い、ということを、じっくり私に知らせてくれたという点で、辻村深月さんのお作に劣らぬ、腕力のある小説。ご紹介せずにいられませんでした。
さて、いよいよ終盤。東大卒業生の作家さんだけで編まれたアンソロジー。表紙の人物の顔が、一瞬『ルビンの壺』に空目して、違う、これ、名探偵のシルエットだわ、と気が付きました。
東大出るくらい優秀だから人気作が書けるのか。東大出てらっしゃるのかと知った途端、作品がすごく見えるのか。いえいえ、どなたもやっぱり、ご経歴に関わりなく素晴らしいストーリーテラーだと思います。
これ、皆さんで打ち合わせとかしたのかな。同窓会だけど、作家同士の邂逅。面白いお話が飛び交ったことでしょうね。会わずに書いて、完成本見て
「ううん、上手い。」
と唸らされるのは、これはこれで乙なものだと思います。
じゃあ、作家以外はどんな人が東大にいるのか、ということで、最近私が読んでいる本の中からひとつ。
著者である佐々木望さんは、人気声優。長いキャリアをお持ちです。大学を単純なキャリアへのはしごと考えるなら、別に大学行かなくたって十分な実績。でも彼は思い立つのです。東大に行こうって。仕事休んで行く、とかなら、まだわかります。でも、ちゃんとお仕事の傍ら受験して、卒業。
東大に名探偵はいないかもしれないけど、周りが何ていうか、とか、どう思われるか、じゃなく。答えのすぐ出ないことでも
『自分にとってこれは意味がある。』
と思ったことは、やってのける人たちはいるんだと、この二冊の本を見て思います。何歳でやるか、じゃない。今からやれるか。どこでやるか、じゃなく、どこであろうとやることの質は落とさないって思ってらして。でないと、小説家も声優も、正解のないお仕事ですから。もしかして、私達との一番の差は、
『誰とも比べない。』
その、一点にあるのかもしれません。
すごい迫力の『ももたろう』。
一回見たら忘れないインパクトです。調べてみたら、作者様のマンガって、THE少年漫画!こう、エネルギーに満ちてて、ドカーンって感じ。すごいのは、この絵本が、ドカーン!を維持しつつも、嫌な感じじゃないこと。暖かくてほがらかで。汚かったり、不必要に怖くないこと。見たら大笑い連発なこと。
児童サービスの一環として行う『おはなし会』では、内容を勝手に変えたりしませんが、これ、読み方工夫するだけで、お子たちは大ウケしてくれそう。自宅でお子さんに読むなら、脱線大歓迎。アドリブ入れて、読む方も抱腹絶倒。絶対楽しいと思います。
めっちゃスタンダードな『ももたろう』。赤羽末吉さんの力のある挿絵が、今でも人気の一冊です。
対選書する時、ぱっとこれが浮かんだんです。この表紙のまゆげ、見て?この表情だけでももたろうがどんな子か解っちゃう。ガタロー☆マンさんのももたろうで、大ウケ取れたら、今度はこっちのももたろうで、どう楽しんでもらうか。読む側の腕の見せ所です。
スタンダードにはスタンダードの。新作には新作の面白さがあるので、こんな身近な作品から見比べても楽しいかも。
それにしても、『暴太郎戦隊ドンブラザーズ』といい、『真MoMo太郎伝説』といい、桃太郎人気なのね。
これ、すごいよ。私達の常識をぶっ飛ばす、バッキバキのおじいさんとおばあさん出てくるから。これはね、大人のお楽しみ。死ぬほど笑って、手が止まりません。サンプル見るだけでも見てくださいな。
おわりに ~ああ、めっちゃ喋った☆~
もう、今回は、カモシダせぶんさんはすごい!尊敬する!同じ本好きだってだけで楽しい!ということをきっかけに、オタクの早口みたいな『対選書』繰り広げてしまいました。やってみて分かる。すごい方だなあ…。
瑠璃花の選書、いいの出したいなって思って考えましたが、まだまだ磨きます。面白いと思ってもらえて、いいぞもっとやれ!って、あなたに言っていただけたら、嬉しくて泣きます。
また遊びにいらしてくださいね。